キャンプ場閉鎖とキャンプブームに思うこと~『女子キャンプ日記~9月号より』

2019年10月4日

先日、とても悲しいニュースを耳にした。伊豆諸島にある神津島のキャンプ場が今年度いっぱいで閉鎖になるということだった。原因は騒音とゴミの放置。これを読んでいる人のなかでも行ったことがあり心苦しむ人も多いと思う。わたしにとっても神津島のその二つのキャンプ場はとても思い出深いものだ。今回閉鎖となる沢尻湾キャンプ場と長浜キャンプ場は、関東でもめずらしい海沿いにある無料でキャンプができる場所。トイレと水場といった最低限な施設しかないが、テントサイトからパワー溢れる海を一望でき、夕方になると海に沈む夕日を眺めながらキャンプができる。スーパーで購入できる島寿司もおいしく、徒歩圏内には温泉もある。少し歩けば天上山という標高572mの山があり、歩くと密林のような場所から急に月の砂漠にでるような不思議な山も楽しめる。そんな自然のパワーと源が詰まった島だ。しかも竹芝から船に乗るだけで、たった3時間半(ジェット船の場合)で行けるアプローチのよさもいい。

徒歩キャンプをよくしていた頃わたしは伊豆諸島によく行き、その中でも神津島はお気に入りの島だった。神津島に到着するとすぐに天上山のダイナミックな岩壁が出迎えてくれる。それに得体のしれないパワーを感じる神津島はまさに神々しくも思え、仕事でもプライベートでも何度も通った。

そもそも神津島に行きたくなったきっかけは友人からのススメだった。1枚の海を目の前にびっしりとつまった色とりどりなテントたちを見て、「ここでキャンプがしたい!」と思ったのだ。普段はあまり混んでいるキャンプ場なんかは好まないのに、どうしてなのか。

今でも時折、混んでいても素敵なキャンプだったなと思うときがある。皆が同じ場所で同じ自然を共有しているなかで、他人同士だけれどもお互いが思いやり、自然を尊んでいるときだ。それをふと、その写真と友人の楽しそうな笑顔から感じとったのかもしれない。わたしが見るからにその写真に、ゴミはほとんど落ちていなかった。

原因として昨今のブームで利用者が急増したことが背景にあるそうだが、本当にそれだけだろうか。ブームだといって、大切なことを伝えてこれなかったメディアの責任も多いのではないだろうか。もちろんわたしを含めてだ。今後、管理人が常駐する島内の別のキャンプ場を拡大することで、受け入れ体制を整えるそう。ただそのキャンプ場は山のなかにあり、もうあの海に沈む夕日を見ながらキャンプをすることはできなくなるのだ。悲しい想いをこれ以上増やさないためにもわたしたちに何ができるのだろう。もっと考えていきたい。


コラムニスト紹介:こいしゆうか
ゆるいエ ッセイマンガなどを得意とする女子キャ ンプコーディネーター/イラストレーター

(オートキャンプ 2019年9月号 こいしゆうかの『女子キャンプ日記』より転載)
無断転載禁止 執筆者の許可を得て転載しているものです。