「“言葉”の秋」トヨタ白川郷自然學校『インタープリター通信』10月号より

2019年10月26日

食欲の秋やスポーツの秋・・・楽しみの多い季節がやってきましたが、皆さんは今秋をどのようにお過ごしでしょうか?きっとこの本を読まれている多くの方は、キャンプやハイキングなどアクティブに活動されていることと思います。私も登山やサイクリングとアウトドア派な人間ですが、最近は本やインターネットの文章などから、季節を感じる言葉や表現を探すのにハマっています。このことを○○の秋になぞらえて、私は”言葉”の秋と呼び勝手に楽しんでいます。

例えば、”秋”というキーワードで探してみます。”錦秋”という言葉はすでに知っていましたが、それに見合う景色に初めて出会ったのは、北アルプス・涸沢の見事な紅葉を見た時でした。”悲秋”という言葉との出会いはその逆で、木々が葉を落としどこか物寂しい雰囲気がある秋の終わりは毎年感じていましたが、その状態を表すにふさわしい言葉を知りませんでした。インターネットで見つけた時は、風景と言葉が繋がった感覚がありとても嬉しかった記憶があります。この喜びこそ私が言葉探しを始めたきっかけです。

岐阜県・石川県両県にまたがる錦秋の三方岩岳

”刈田”という言葉は晩秋の季語で、稲を刈り取った後の田んぼのことです。刈り株だけが整然と並ぶ光景からは、一年の仕事を終えた農家の充実感が感じられ、どこか寂しさを感じさせる使い方ができるということを知った時、二文字に込められたストーリーを情景として読み取ることができ感動しました。

調べれば調べるほどまだまだ自分が知らない美しい言葉がたくさんあることに驚かされます。山の紅葉を、女性がお化粧をした綺麗な様に見立てて”山粧(よそお)う”と表現したり、秋の盛りの頃、人間界の喧騒から少し離れると山からは絶え間なく虫の音が聞こえてきます。これを”虫時雨”と表現します。日々変化する自然界の状態をつぶさに観察していた先人たちが遺していった、風景と繋がる言葉の数々に出会うことに喜びを感じています。

秋にしかできないことではありませんが、文字に触れる機会をつくって、言葉と風景合わせの旅に出かけてみてはいかがでしょうか。知らない言葉を知り、自分の中の季節に対する感受性を高めると、フィールドに出た時の景色が新鮮に見えてくるかもしれません。


<インタープリタープロフィール>

浅田 開人(あさだ かいと)

埼玉県所沢市出身。学生時代は山、川、海をフィールドに様々なアウトドアアクティビティを経験。外で遊ぶことの楽しさや自然の素晴らしさを伝えたいとの想いから、2017年4月にトヨタ白川郷自然學校へ入職。村ライフ満喫中。

(オートキャンプ 2019年10月号より転載)
無断転載禁止 執筆者の許可を得て転載しているものです。


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