防災とキャンプの関わり方 ② -命を守る5要素と優先順位-

2024年3月12日

②命を守る5要素と優先順位―生命維持に必要なものとその時間を知る

〈命を守る五要素〉

サバイバルの原則として命を守る「5要素」があります。

  1. 空気 3分間
  2. 体温 3時間
  3. 水 3日間(72時間)
  4. 火 1週間
  5. 食 3週間

優先順位はこの通りですが、それぞれ「3の法則」に則って耐えられるであろう上限の時間が決められています。

1.空気 3分間

「空気」については素潜り等の特別な訓練を受けた人以外で、普通の人なら1分程度、3分を耐えられる人は少ないでしょう。この「空気」に関しては非常用持ち出し袋等で用意できるものは限られています。Amazonでも購入出来ますが、「けむりフード」や「スモークシャットアウト」という商品です。耐燃素材でできた大きな袋だと思ってください。この中に「空気」を入れて頭から被って脱出を試みるというものです。通常のビニール袋では溶けて皮膚に張り付いてしまうところ、これらの商品ならある程度の時間を稼げるそうです。ただし過信は禁物です。

2.体温 3時間

次に「体温」です。サバイバル用語では「シェルター」とも言われます。「体温」において最も怖いのは凍死です。真夏でも、標高の高い場所で雨に濡れてしまった場合は、「体温」の低下を招いて簡単に死んでしまいます。3時間とありますが、「体温」が下がってしまうと指先がかじかんで焚火のマッチを擦ることもできなくなります。そうなる前に暖をとらないと命の危険にさらされます。「体温」については次回の投稿で、もう少し詳しくお話しさせていただきたいと思います。

3.水 3日間(72時間)

次は「水」です。よく救助のリミットは72時間と言われますが、脱水症状で亡くなってしまうまでの時間がこの3日間です。人間の身体は体重の60%が「水分」でできていると言われています。そして体重に対して2%の「水分」が失われると脱水症状に陥ります。脱水症状が出ている状態で物を食べると、「水分」が胃に集中して最後には死んでしまいます。オレンジなどの「水分」を豊富に含んだフルーツならいいのではないかと思ってしまいますが、胃に「水分」が集中してしまうので食べるべきではありません。人は1日に2ℓの「水分」が必要だと言われています。「水」の確保の方法については、Amazonでも購入出来るこれらのものがあると便利です。左から「seychelleサバイバルプラス」、「seychelleサバイバルプロ」、「SAWYERミニ」、「SAWYER1ガロングラビティシステム」、「折り畳みポリタンク」。その他様々な浄水器が販売されています。普段のキャンプで浄水器を使ってみて使用方法に慣れておくとよいでしょう。

4.火 1週間

そして次に「火」です。「火」からは光と熱を得ることが出来ます。暗闇でも「火」があれば灯りになります。また寒いときは体が温まります。硬くて食べられないものも、「火」を通すと柔らかくなり食べられるものもあります。水を煮沸することによって飲めるようになるかもしれません。このように「火」はオールマイティに様々な場面で活躍します。

5.食 3週間

最後に「食」です。「食事」は3週間から30日は食べなくても生きていくことはできると言われています。ただ「食事」をとることにより希望が持てたり、モチベーションの増加につながることがあります。最も効率の良いサバイバル食はシチュー、日本でいえば鍋と言われています。「食べ物」の栄養素がすべて含まれていて、暖かく食べることができる鍋は納得の料理だと思います。非常食の代表にはアルファ化米があります。色々な種類のアルファ化米が出ています。少々高いですが、備蓄には最適です。そしてたまに備蓄の消費期限を確認して、消費期限が近付いたものは食べてしまって、また新しいものをストックしておく。これがローリングストック法です。これを繰り返せば常に非常食が備蓄されている状態を保つことが出来ます。備蓄を日常生活の一部にするのが継続するための一つの方法です。

さて、ここで優先順位の中で「火」が4番目に来ています。「火」をおこすことによって体温が暖められる。「火」で煮沸することによって「水」が飲める。「火」で熱することによって「食べ物」が食べられる。では、「火」は「空気」の次になるのではないか、という疑問がわいてきます。でもサバイバルの原則において「火」は4番目です。この原則は変わりません。なぜなら「火」は手段であって目的ではないからです。他の4つはすべて生き残るために必要なものになりますが、「火」だけはそれらを補足する手段なのです。ただ最近では「火」は1週間という指標を掲げる時があります。サバイバリストが熱帯のジャングルで、「火」なしで生活できるかというチャレンジをしたそうです。環境は温暖で、「食べ物」も「水」もある状況で、サバイバルには適した状態だったそうです。ただみんな1週間くらいで根を上げるんだそうです。理由は夜が怖いから。真っ暗闇の夜が耐えられないそうです。獣が近付いてきてもわからない。漆黒の闇が本当に怖くてギブアップするそうです。先ほどの「火」は光熱費という言葉が示す通り、光と熱をもって来てくれるという話そのものです。そういった点から「火」は「食」の前になると理解してください。

《前回の記事》


(執筆)
嶋田 嘉人(JAC公認オートキャンプ指導者インストラクター)
嶋田嘉人防災士事務所 代表JBS認定『ブッシュクラフトインストラクター』、JUSS認定『災害対策インストラクター』、アーバンシラット協会認定『インターミディエートインストラクター』で各種セミナーを開催。普段は外資製薬会社のMRです。副業の個人事業主として活動しています。