〈シグナリング〉
被災地に取り残されて自身が要救助者になってしまった場合が想定されます。その場合は公助に該当する警察や自衛隊のような救助者に自身の存在を周りに知らせなければなりません。大声で叫び続ければ気づいてもらえるかもしれませんが、声を発し続けることにより、体力を消耗して力尽きてしまうかもしれません。体力を保つための食事ができない状況であれば、体力を温存してそれ以上減らさない努力をする方が賢明です。そのような場合に自分の存在を示すために役に立つ方法がシグナリングです。
シグナリングには大きく分けて2つの方法があります。聴覚シグナリングと視覚シグナリングです。
1.聴覚シグナリング
聴覚シグナリングの代表的なものはホイッスルです。
比較的体力を消耗せずに大きな音を出すことが出来ます。ホイッスルで気を付けなければならないのは、学校行事などで昔からよく使われている笛の中にコルクなどの玉が入ったものがあります。この球の入ったホイッスルは水に濡れてしまうと音が出なくなるという特性がありますので注意が必要です。今は球の入っていない大音量を出せるホイッスルがネット上に沢山販売されておりますのでそういった商品を選択するのが良いでしょう。
指笛も大きな音としては意味がありますが、指笛を続けていると簡単に酸欠状態になってしまいます。もしもの場合に備えて指笛を吹けるように練習しておくことは良いことだと思いますが、あくまでも手段の一つとして考えておくと良いと思います。
また携帯ラジオなどもつけっぱなしにしておくことにより、眠っている最中でも救助者が見つけてくれる可能性が高くなります。
あとは金属同士を叩くことによって音を出す方法です。金属音はかなり遠くまで響きますので覚えておくと良いと思います。
例えばキャンプでよく使うクッカーやケトルにお玉、ペグ、金属性ハンマーなどで叩くことにより音が出せます。ただし気を付けていただきたいのはこの方法はクッカーやケトルを簡単にへこませてしまいます。聴覚シグナリングの一つにこのようなものもあるということを知っておくだけで選択肢が増えると理解しておいていただければ十分です。
2.視覚シグナリング
次に視覚シグナリングについてお話します。
視覚シグナリングではエマージェンシーミラーや手鏡を使ったシグナリングの方法があります。エマージェンシーミラーはただ覗くだけではなく、使い方に慣れが必要ですので、動画サイトなどで使い方を習得するのが良いと思います。慣れてしまえば自然と使えるようになります。
手鏡をエマージェンシーミラーのように使う場合もコツが必要です。
最もわかりやすい使い方は、ライフルを構えて手前のサイト(照門)と銃口のサイト(照星)を合わせる要領で行うことです。先ずは右手で手鏡を持ち、右目のすぐ横に付けます。左手の人差し指を立てて腕を伸ばします。太陽に向かって鏡の反射による光を人差し指の先に合わせます。指先に光が当たった状態で光を当てたい対象物に両者の位置を維持しつつ持っていきます。
この場合注意点が2点あります。1点目は手鏡はなるべく目の真横に持ってくること。目から離れれば離れるほど角度のズレが大きくなります。イメージは先ほどお示ししたライフルを構える要領です。手前の1度のズレは数百メートル先では大きなズレになってしまいます。もう1点は太陽の位置関係により対象物に反射光を当てられない場合があります。これは自身のいる場所と太陽との位置関係ですのでどうしようもありません。その場合は他の方法を考えるべきです。
そのほかにLEDライトやサイリウムがあります。LEDライトの使い方はライトを片方の手で隠して、つけ¥っぱなしにせず点滅の状態にすることです。点滅の状態にすることによりより発見されやすくなります。最近のフラッシュライトはこの点滅の機能のついたものも多数販売されております。
もう一方のサイリウムはケミカルとも言われます。こちらは軍隊用の高価なものから100円ショップのパーティーコーナーにある安価なものまで沢山の種類があります。サイリウムは購入されたら一度は使用してみて、使用感や持続時間を確認することをお勧めします。このサイリウムをシェルター等の外部に設置しておくことによって夜間でも遠くから発見される可能性が高まります。
世界共通の遭難信号にSOSがあります。
SOSは「・ ・ ・ ― ― ― ・ ・ ・」です。モールス信号では「ト・ト・ト・ツー・ツー・ツー・ト・ト・ト」と覚えるのが一般的です。
短い音と長い音を3回づつ組み合わせます。SOSOSでもOSOSOSでもどちらでも良いです。
SOSは音でも光でも伝達することが出来ます。
(執筆)
嶋田 嘉人(JAC公認オートキャンプ指導者インストラクター)
嶋田嘉人防災士事務所 代表
JBS認定『ブッシュクラフトインストラクター』、JUSS認定『災害対策インストラクター』、アーバンシラット協会認定『インターミディエートインストラクター』で各種セミナーを開催。普段は外資製薬会社のMRです。副業の個人事業主として活動しています。