心理カウンセラーが考える現代のキャンプの重要性

2022年9月2日

こんにちは!心理カウンセラーの野本です。
僕は心理カウンセラーとして15年活動しています。
心理学スクールで8年ほど講師を務めた経験もあるのですが、今は独立してカウンセリングを行いながら、アウトドアフィールドで心理学を活かしたワークショップなどを行なっています。
そんな私が心理カウンセラーとして、アウトドア・キャンプにおける心理的効果を考察していきたいと思います。

日々カウンセリングを行なっていても、悩みの数は人の数ほどありストレスが多様化された世の中だと感じます。
ただ押し並べて言うと悩みの源は「人間関係」と言っても過言ではないです。
そしてコロナ禍になり、人と人との距離が物理的にも心理的にも開いてしまっていますよね。

強いストレスと対面した際に人や動物が示す反応は「3F」あると言われます。
「3F」とは

  • Fight(ファイト)
  • Flight(フライト)
  • Freeze(フリーズ)

戦うか、逃げるか、固まって動けなくなるといったところです。
いずれにしても身体は興奮状態になります。
身体は強張り、体温が上昇し、呼吸は荒くなります。
そのストレス状況から「3F」を駆使してストレス状況から解放されると、緊張状態が緩みリラックスしていきます。

多かれ少なかれ私達は人間関係のストレスを感じながら生きていますよね。
その都度
興奮状態→リラックス状態
と切り替えて生きています。

しかし、ストレス状況が連続して降り掛かってくると、リラックスする間もなく興奮状態が続くわけです。
その蓄積がある臨界点を超えるとリラックスの仕方がわからなくなって、精神疾患になってしまう方が増えていると感じています。

今、コロナ禍で以前に比べて、思うようにならない人間関係が増えていきました。
最初は「今だけは仕方ない!」と思えていたことも、2年以上経過してくると多くの人がストレスの蓄積を続けているのではないかと危惧しています。
コロナ禍だから仕方ないと、環境が整うことを待つのではなく、自らリラックスできる状況を作っていくことが今の時代急務と考えています。

それではどうしたらリラックスできる状況を作れるのでしょうか?
それがキャンプを始めアウトドアの中で自然に触れることなのです!

「1/fゆらぎ(自然のリズム)に癒される!」

自然界に存在するもので、じっと静止しているものはありません。時間の経過と共に必ず変化していきます。目に見えるほどの変化ではなくても、完全に静止しているものはないと言えます。そしてその動きは厳密に言うとすべて不規則な動きを含んでします。

風のそよぎ、小川のせせらぎ、星の瞬きなど自然界は不規則にゆらいでいます。

この自然界の揺らぎには、人を心地よくさせる特殊な周波数があります。
それを「1/fゆらぎ」と言います。
「1/fゆらぎ」は他にも

  • 火のゆらめき
  • 心臓の拍動
  • 眼球の揺れ
  • 体温の変化
  • 脳波

などがあります。

また、音楽や人の声の中にも「1/fゆらぎ」を持つものもあります。
「1/fゆらぎ」のある世界に一定時間、身を置いておくと私達の脳波がα波になります。

α波とは最もリラックスしている時に出る脳波です。
それは起きている時でもなく、寝ている時でもなくちょうど中間のまどろみのような状態です。
ヨガの行者や禅の高僧が瞑想をする時に出る脳波です。
意図的にα波を出すことは非常に難しいのですが、1/fゆらぎに触れていると自然とα波が出るのはすごいことですよね!

α波の効用もとても素晴らしく

  • 副交感神経が優位の状態でとてもリラックスする
  • たっぷり寝たのと同じくらい、疲れが短時間でとれる
  • 自然治癒力が高まり、免疫力が上がりホルモンバランスも回復する
  • アイデアのひらめきが起こりやすくなる

など良い事ばかりなのです。 

そして近年、焚火がブームになっていますよね。しかも実際にキャンプに行って焚火をすることだけでなく、YouTubeなどで何時間も焚火の映像が流れるだけで何百万回と再生されているのは「1/fゆらぎ」が大きな影響かと思います。

それだけリラックス効果があるわけですね。
今、キャンプに対しての需要も上がってきていますよね。
これって理屈で「キャンプに行こう!!」となっているわけではないと思います。
どちらかというと本能的に求めている人が増えてきたと感じます。
人間も含めて動物は、不快なことを避けて、心地の良さを求めて生きています。
人間関係もそうですよね。嫌いな人を避けて、好きな人と一緒に居たいと自然にやっていますよね。

さて「何によって心地の良さが得られるか!?」はその時その時によって違います。
ではどのようにしていけば良いのか?

それは今の心が求めている状態と「同じ質の物事に触れる」ということです。

少し分かりづらいですよね・・・
これは「同質の原理」と言って、アルト・シューラー博士が提唱しています。
特に音楽療法の中で使われるのですが、「落ち込んでいる時」には「低い音程でゆっくりなテンポの曲」が「元気な時」は「明るくてアップテンポな曲」がその人の心に寄り添ってくれます。

とてもシンプルで当たり前のように思うかもしれません。
でも意外と真逆のことをしてしまう人がいます。
落ち込んでいる時に「早く元気になりたい!!」と明るくてアップテンポの曲を聞いていると、返って落ち込みから抜け出せなくなります。
お葬式の時に気丈に明るく振る舞っている人ほど、喪が明けなかったりします。

大事なことは今のご自身の心の状態に逆らわず「同じ質」の物事に浸ってみると、自然と心は穏やかになっていきます。

今、キャンプを始めアウトドアの需要が高まっている背景で感じることは本能的に自然に癒しを求めている方々が増えているということ。
心が疲れてしまっている方が増えているのではないかと考えられます。

もちろん、心からアウトドアフィールドを楽しんでいる方もおられることは百も承知です。
ご自身やご家族、ご友人との楽しみの時間としてキャンプを味わう方が増えていくことは喜ばしいことです。

「最後に」

僕は息子が一歳になる前の毎晩夜泣きをする時期に、はじめてキャンプ場で車中泊をしたら驚きました。
その日の晩は一度も夜泣きもせずに朝までぐっすり寝ていたのです!!
(もちろん全ての子供さんに当てはまるわけではないと思います。) 

それ以来息子をキャンプに連れまわしています。
今では5歳の息子と二人で一週間ほど車中泊の旅に出れるようにもなりました。
妻は妻で子育てから解放されて一人の時間を満喫できるみたいで家族共々幸せな時間です。
カウンセリングの現場で夫婦の悩みをお聴きすることも多いです。

どなた様も相手を思いやる気持ちはお持ちなのですが、どうしたら相手がほっとするのか!?嬉しいと感じるのか!?がわからないと思われている方が少なくないです。
そう、どうして良いかわからない時間が続くと、だんだんと煮詰まってしまい人間関係が破綻してしまうケースはわりと多いのです。
そうなってしまう前に息抜きやガス抜きができるのも、自然の中でキャンプをしながらゆっくりと自分を癒す時間ではないでしょうか。

「インストラクターの皆さんと分かち合いたいこと」

初心者向けのキャンプイベントに家族で参加してもらうと、ご自身の子供さんに「こうしなさい!ああしなさい!これはしちゃだめ!」と我が子を心配して、何かする前から口を挟んでしまう親御さんもいらっしゃいます。
そうすると子供さんは最初は積極的に参加していても、段々つまらなさそうな表情になっていきます。
そういう時は子供たちだけ集めて、親御さんたちは別に集まってもらって少し離れたところから見守ってもらいます。
そして子供たちにある程度道具の使い方だけをレクチャーして、テントやタープの設営の仕方、火の起こし方を考えながらチャレンジしてもらうと、設営自体は時間はかかりますが、子供たちの目の輝きが変わっていきます。
その子供たちの姿を見て親御さんがハッとされる方が多いです。

僕はキャンプ初心者の方々にキャンプの魅力や重要性を感じてもらうには「達成感」を味わってもらうことが大事だと考えています。

「はじめてだったけど自分で出来たー!!」という達成感です。
それは「教わったことが出来た!」ということではなく慣れない非日常の中で、好奇心を持って、自分で考えて、チャレンジして、上手くいかないことも経験しながら、その人なりのペースややり方で辿り着いた達成感です。
こういうプロセスで体験したものは「自信」につながります!
よくカウンセリングで「自信がないのでどうしたら自信が持てるか?」と尋ねられることがあります。
「自信」とは「自分」を「信じる」と書きますよね。
つまり「自分には出来る!」と信じられている人を「自信のある人」とも表現できます。
ではどうしたら「自分には出来る!」と信じられるのか?
その方法の一つが、新しいチャレンジをして、その中で小さな成功体験を重ねていくことです。

インストラクターや指導者、教育に携わるすべての方も共通して安易に答えを与えることはせずに、
相手が自分なりの答えを出すまで「待つ」ことは重要ですね

まだまだキャンプにハードルの高さを感じている方々に、日本オートキャンプ協会の皆さんでサポートし合って元気な世の中にしていけたら嬉しです!

キャンプって楽しいですからね!!


(執筆者プロフィール)
野本 弘毅 (公認オートキャンプ指導者)
心理カウンセラー