地域活性のハブを担う 新世代キャンプ場『キャンプの作法~7月号より』

2019年7月17日

キャンプ場が、大なり小なり、地域振興に関わっているのは誰もがご存じでしょう。
今回は地域の関わりについて、従来にない取り組みに挑戦するキャンプ場を紹介します。お話をうかがったのは不動の滝自然広場オートキャンプ場(静岡県榛原郡川根本町)の代表である鈴木 論さん。不動の滝自然広場オートキャンプ場は閉鎖されていた町営のキャンプ場を、地元で10年前から飲食店を経営する鈴木さんが仲間とともに、リニューアルオープンした施設です(2015年8月号本連載に関連記事あり)。
「飲食店もキャンプ場も、地元が盛り上がるきっかけになればとの思いから始めました」と鈴木さん。私が驚いたのは、キャンプ場再開から一歩先の話です。鈴木さんたちは、キャンプ場のオープンにとどまらず、地元で開催するトレイルランニング大会を企画。地域の後援や協力を得ながら開催を実現しました。それが2016年から始まった南アルプスマウンテンマラソン(MAMM)です。
自分たちの施設を含め、地域の6つのキャンプ場をランナーの宿泊所とするなど、キャンプ場もうまく活用し、大会は成功。当初から、キャンプ場が地域活性のハブ(ネットワークの中心)になりたいとの考えがあったといいます。

2016年11月の南アルプスマウンテンマラソンの様子。鈴木さんは初回から大会の実行委員
長を務めています。次回は2020年開催予定。詳細はhttp://ma-mm.com/にて

MAMMは初回940人の参加者を集め、2017年、2018年と継続して開催。「初回は地元の人全体には周知されていない状態でしたが、回を重ねるごとに認知度が高まり、ボランティアや街頭の応援も増えて、川根本町の秋を代表するイベントになっています。
いまでは役場の人たちにも親身になってサポートしてもらえるようになりました」(鈴木さん)大会では、ランナーのために地元のお茶、羊羹、とろろごはんを味わえるスポットも用意されました。これは地元商工会婦人部の担当。地元の味を紹介する機会として、婦人部の女性陣にとっても大会は楽しみなものになっているそうです。
また、不動の滝自然広場オートキャンプ場は静岡県榛原郡吉田町で開催されるフェス「頂 -ITADAKI-」に飲食ブースを出店。このイベントでは川根本町の名物であるお茶を取り入れた飲み物を提供するなど、地域の情報発信にも貢献。「今年は夏を過ぎたころに不動の滝自然広場オートキャンプ場で釣りのイベントや焚き火の講座を計画中です。

2015年にリニューアルオープンした不動の滝自然広場オートキャンプ場。住所/静岡県榛
原郡川根本町下泉1122、TEL 0547-56-1600。公式サイトhttp://www.ffnpcs.com/

今後もキャンプ場から、もう一歩踏み込んだ提案ができるといいなと考えています」(鈴木さん)。キャンプ場が観光スポットの一つとしてだけではなく、地域の担い手として前進する姿勢にはとても共感します。鈴木さんたちの活動は、キャンプ場運営の新しい在り方を提示しているといえるのではないでしょうか。


コラムニスト紹介:ビューティフルキャンピング(ペンネーム&活動名)

ファッション誌、ファッション広告を中心に編集・執筆を行う。2011年春から、キャンプ空間をスタイリッシュに演出する楽しみ方「ビューティフルキャンピング」を広めようと活動中。

http://beautifulcamping.net/

https://www.facebook.com/BeautifulCamping

(オートキャンプ 2019年7

月号 『キャンプの作法』より転載)
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