キャンプの行動や選択でSDGsに繋げる

2022年2月14日

「キャンプ」の行動や選択でSDGsに繋げる

 娘が小学校から「SDGs 」のパンフレットを持って帰ってきたのは、もう3、4年前だろうか。その時はまだ世間的な認知度が高かったわけではなく、かくいう私も17色で囲まれたイラストを見て視覚検査の手紙だろうかと思っており、まさかこんなに至る所でサステナブルが叫ばれる世の中になるとは思ってもいなかった。

 SDGsについては学校で教わる子どもたちよりも、きっと今の親世代の知識の方が乏しいのではないだろうか。世間のみなさん、さらには自然と接する機会の多いキャンパーさんはどの程度ご存知なのだろうか?自分の知識の無さを恥ながらも、いい機会をいただいたので少し調べることにした。

 環境に関することを多く目にするのでそのような取り組みがメインかと思いきや、目標として掲げられている17項目は環境だけに限らず、貧困や教育、経済や雇用など多岐にわたる。さらにそれらを具現化した169のターゲット、その下には232の評価指標があるというから、一般的ママキャンパーの私にはもう途方もない話に聞こえてくる。

 しかし一人一人が意識と行動を変えてこそ、持続可能な未来の実現に繋がるのだろうし、「子どもたちのために」ということであればそちらを向かざるを得ない母心。まずは身近なところでこの壮大なSDGsに繋がるエピソードを考えてみることにした。

SDGsを考えるきっかけになったあるキャンプ場での体験

 実は「SDGS なキャンプというテーマで記事を書いて欲しい」と連絡を頂いた際、真っ先に思い出したあるキャンプ場での体験がある。

そのキャンプ場は海の近くにあるが、「炊事場には浄化設備がないため、油・生ゴミ・洗剤などは直接海へ流れていきます」とHPに記載されていた。もちろん「次世代に今の環境を残せるよう」にと、協力事項も書かれていたし、現地では生ゴミを捨てるためのバケツが1組ごとに用意され、最低限の環境への配慮はされているようだった。

 ただいくら環境に配慮されているとはいえ、個人的には排水溝と海が「直結している」というプレッシャーはとても大きく、いつも以上に“海の環境を壊さないためのキャンプ”を心がけた。

 その時に工夫した点をいくつか思い返してしてみようと思う。

■環境に配慮された洗剤を使用

 禁止はされていなかったが、やはり海に直接流れ出るとなると気になったため、環境に優しい洗剤を少量だけ使用した。私は特に指示されている場合を除きキャンプで利用する洗剤として「Frosch」という商品をよく利用している。界面活性剤は使用されているが、通常のものに比べると薄く、使用後は自然に帰りやすいとされている。商品の成分だけをみるともっと環境に優しいものがあるが、Froschに関しては生産過程や輸送方法などトータルでの会社の取り組みがとてもしっかりしており、応援する意味でも選んでいる。

■まな板の汚れ防止や食器の油拭きのためのアイテムを持参

 牛乳パックとトイレットペーパーを準備。お肉や魚など汚れを落とすのに水や洗剤をたくさん使うものには牛乳パックをまな板として利用。パックの底の部分は、食べ終わった皿の汚れを落とすヘラとして使い、汚れが少なくなったところでトイレットペーパーでさらに拭いている。ペーパーの利用量も減らせるし、トイレットペーパーはキッチンペーパーなどよりも少量でふけるので、ゴミも少なくなるためキャンプで利用することが多い。

■「汁物」の残りはアレンジして、捨てる水分を最小限に

 夜の食事で作った汁物には翌朝ご飯を入れておじやにし、できるだけ汁ごと食べ切れるようにメニューを考えた。具が入ってない水分だけのゴミだとしても、そのまま海に流れてしまうのを防ぎたかった。いつも「食べ切る」分量だけ作るという意識は持ってるものの、流石に液体のことまで考えることはないが、意外と「水分の処理」はキャンプで厄介だと思う部分でもあるので、結果的に片付けがとてもラクだった。

■残った食材は無理に現地で調理せず、持ち帰ってきてから食べる。洗い物も同様。

 このキャンプに限らず、食材が余った場合は無理にその場で調理せずに、そのまま持ち帰ることが増えた。結果自然に近い現地での洗い物やゴミも少なくなるし、帰ってきてからの食事の用意の負担も軽くなり一石二鳥に。最近ではキャンプで炊いたご飯を家で食べるととても美味しいことに気づき、あえて多めに炊くこともある。また朝ご飯分の洗い物を持ち帰ることで、撤収の時間に余裕ができたことも利点かと思う。

他にもあるキャンプと相性のいいSDGs項目

 「海を汚さない」という一面に特化したキャンプで気をつけたことを書いてみたが、特化されていたからこそ、どこに気をつけ何を実践するかが明確だった。そして一般的ママキャンパーの私でも、案外「キャンプ」での行動や選択は、知らぬうちにSDGsに繋がっていたのだなと再認識することもできた。

 私はインストラクターとしてイベントや講座で参加者にノウハウや気をつけるべきことを伝える身だが、「SDGsなキャンプ」という視点からどのようなことを教えられるか。それは特に新しい大掛かりなものを加えることではなく、今までやってきた事柄に新しい切り口から関連づけてアプローチしてみると、しっくりくるのかもしれない。

「環境」という項目に限らず、例えば「4・質の高い教育」や「5・ジェンダー平等」「17・パートナーシップ」など、一見キャンプとは交わらなさそうな目標だったとしても、きっと切り口が見つかればそこに繋げていけて、それがキャンプの良さをよりわかりやすく、より広く伝えていける一つの術になる気がする。キャンプはそれだけ、SDGsと相性がいいのだと思う。今後主催者となるときには、ぜひ積極的に取り入れていきたい。

 それにしても・・・

 もちろん費用は嵩むのは重々承知の上だが、未来の子供たちに残す持続可能な環境整備のことを考えると、これからキャンプ場を作ろうとしている多くの方々にはぜひ浄化槽など人類の叡智を使っての環境維持に取り組んでいただけたら、と。利用者としても、そういうトータルでの取り組みを支持してキャンプ場や商品を選んでいく時代なんだろうなぁ、と思うところだ。


(執筆)
FamiCamp越前麻代(指導者インストラクター)
SpringNeige代表“家族力”を育むための『コト=体験』を提供。
キャンプ場やショップにてキャンプイベントやクッキングなどコンテンツの企画運営をしている。
http://kazoku-camp.com
https://youtube.com/channel/UCG3thcoC7Py8E8pwvynnyRw


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