キャンプに行って守りたい ~人と人、音のマナー~

2023年4月30日

≪聞こえてくる音・音・音≫

サラサラ、ヒューヒュー、サクサク・・ 自然豊かなキャンプ場に着くと、さまざまな音があちらこちらから聞こえてきます。川のせせらぎや、風が森を抜ける音、落ち葉を踏みしめる音。
そしてキャンパー達が集まり始めると、バサッバサッ、カンカンカン、コンコンコン、パチパチッといった音が加わります。テントを広げ、ペグを打ち、薪を割って、焚き火がはじける。そこには、人と自然とが寄り添い、心地のよい時間がゆったりと流れます。大自然の中での食事やお酒は、そのロケーションと相まって味は格別ですよね。

でも、時として他のキャンパーのワイワイ・ガヤガヤが気になったことがありませんか?仲間同士で盛り上がりつい声が大きくなってしまったり、ファミリーキャンパーで子供たちが遅くまで騒いでしまったりなどの場面もあるかもしれません。周囲の人たちは、それが自分にとって都合の良い音だと≪快適≫に感じますが、都合の悪い音だと≪不快≫に感じます。山中の野営とは異なり、キャンプ場であればそこは公共の場。騒音に配慮し、音量・時間帯など、モラルを守ることが求められます。

もし始める時に、メンバーの1人が「周りに迷惑かけないように楽しもうな!」と声掛けしていたら、きっと盛り上がってきても「ちょっと声のトーンを落とそうぜ!」という言葉が出てくるのではないでしょうか。誰しも、迷惑をかけたいとは思ってはいないはずです。ただ、迷惑をかけていることに気付いていないだけだと思います。キャンプの楽しみ方は人それぞれですが、他の人の迷惑になることだけは極力避けたいですね。

≪音?迷惑?・・まずその前に!≫

皆さんは、キャンプ場に着いてテントを立て始める前に〈お隣さん〉に挨拶していますか?明るく笑顔で、「こんにちは!今日は晴れて良かったですね!宜しくお願い致します!」この一言で初対面のお隣さんとも心の距離がグッと縮まりますよね。また、このやりとりだけで『お隣は小さいお子さんもいるから刃物などは出しっ放しにしないようにしよう』とか『年配のご夫婦だからペグダウンしたロープに躓かないように光る目印をつけよう』など、いろんな状況把握ができ、対策も取れますね。子供の頃に教わった『相手の立場に立って考える』これは大人になってこそ、しっかりと心に刻みたいものです。そしてファミリーキャンプであれば、親として子供たちにマナーを教え伝える絶好のチャンスになるはずです。

≪隣は何をする人ぞ≫

皆さんは入院したことがありますか?
「秋深き 隣は 何をする人ぞ」これは松尾芭蕉が病で床に臥していた時に読まれた句ですが、大部屋に入院した経験がある方は、同室の方が面会者と話す声や、消灯後の咳払いさえも気になって眠れないことがあったのではないでしょうか。普段は、自宅で気ままに暮らしていても、それがひとたび大部屋入院となるといかにストレスに感じるか、実体験のある方もいらっしゃると思います。

余談ですが、私は夫と富士登山をします。以前、山小屋(部屋は数十人が雑魚寝で宿泊するスタイル)で仮眠をとろうとした時、部屋の隅からガサガサッゴソゴソッと音が聞こえてきました。山小屋到着が遅くなってしまった登山者が、リュックの片付けの為にレジ袋に物を入れたり出したりしていました。それはとても大きな音に感じました。その方は極力静かに片付けようとしているようでしたが、すでに消灯時間も過ぎており、不機嫌そうに舌打ちする人もいました。他の皆さんは歩き続けて疲れ切った方たちばかり。静まり返った山小屋の広間では、さすがにレジ袋はかなりの爆裂音でした(笑)
そして『もし自分が反対の立場だったら、周りに迷惑をかけていることに気付けただろうか・・』と自問しました。

≪被災?!キャンパーの出番!≫

近年では国内でも災害が多く、毎年のように被災され避難所生活を余儀なくされている方の姿をTVで目にします。体育館の冷たい床に、簡単な仕切りだけで生活し、プライバシーもない。こんな事が皆さんの身に起きないとも限りません。
そんな時こそ、われらキャンパーの出番です。キャンプを通して身につけたアウトドアの知識は、災害時にはそのままサバイバルの知識にもなり、共同生活における〈マナーの達人〉にもなりうるのです。被災という現実は、精神的にも物質的にも肉体的にも大きなストレスとなって被災者を襲います。

同じ避難所に暮らす人たちが自由気ままに過ごしていたのでは、そのストレスは何倍にもなって被災者を苦しめ続けます。そこに、マナーや譲り合いの気持ちがあれば、ストレスを大きく減らすことができるのです。次にキャンプに行った時、もしも被災したら自分には何ができるか、何に気を付けたらいいか、ほんの少しでいいので考える時間を持っていただけたら嬉しいです。

≪まとめ≫

マナーには100%の正解はないのかもしれません。ただ、相手を尊重し、敬意を払い、お互い思いやりの気持ちを持つことができれば、きっとキャンプは皆が楽しめる至福の時間になる事でしょう。
さぁ皆さん、今宵も焚き火のはじける音をBGMに、美酒で乾杯!!


(執筆者紹介)
小池カヨ (JAC公認オートキャンプ指導者インストラクター)
看護師、防災士
ただいまキャンプ場の新規開設に向けて奔走中です。