わたしが不定期で漫画連載させてもらっているなかで「ジモコロ」というメディアがある。様々なライターさんが地元のヒト、コト、モノをあらゆる角度で記事にした地元メディアだ。そこで連載しているテーマはわたしの好きな「お酒とキャンプ」。キャンプに行った際、その土地で造られた「地酒」と旬な食材をキャンプで楽しむをテーマに、漫画連載を続けていた。ゆるい内容にしてはキャンプと酒に興味がある読者からは好評だったそうだ。しかし実はその漫画の連載を1年ほどお休みさせていただいていた。他の漫画書籍のスケジュールもあったのだが、少し内容に行き詰まりを感じていたところもあるのかもしれない。やっと「描きたい」と思ったのは夏に行った岩手木炭協会の炭窯を見学させてもらったときだ。岩手県は木炭生産が日本一であるのはあまり知られてはいない。
話は逸れるが、今年は少し置いていかれてしまったくらい「キャンプブーム」をひしひしと感じられた1年だった。うれしい気持ちの反面、複雑な残念な想いがあるのは単なるわがままな気持ちなのだろうか。「ブーム」になるとどうしても「本質」を見失いがちになる。どちらかというと、わたしはぐっと黙っていたようにも思える。大きな波がどうなるのか他人のように自分を見ているような。でもそれは臆病なことで何にもならない。
そんなときに声をかけてもらった炭窯見学は予想以上に衝撃だった。街から山を越えて車を走らせたところに炭窯があり、ご年配の職人さんが一人出迎えてくれた。そこの釜は大きく4つもありほとんどの作業をお一人でされてるそうだった。ナラの木がずらりと並ぶ。何トンと及ぶその木材を少しずつ手で炭窯に運ぶ姿を想像するだけでジワリと汗が出る。ナラの木は20年周期に伐採しないと再生力を失ってしまう。一度森に手を出してしまえば、それはずっと手を加えてあげないと森は荒廃することになる。森が弱くなると土が弱くなり土砂災害などの原因の1つにもなる。結果から言うと、自然と人の生業は循環しているのだ。建物とコンクリートに挟まれながら日々パソコンを見て仕事をしているとその感覚をふと忘れてしまうけど。わたしがキャンプで体感し知れたのは、その「循環」だったのだ。キャンプ場も単なる自然ではない、畑も田も、自然の風景も。その単なる自然ではない自然のなかで遊ぶキャンプとは一体なんなのか。レジャーなのか、生活なのか。
見学に行った日はそのまま岩手でキャンプをした。1つ1つ丁寧に造られた炭を燃やすとどんなランタンよりも美しい色で暖かく灯る。職人さんが自然の力を借りて丹精込めて作った炭を眺めながら、いつもと少し違うキャンプの時間を過ごした。
コラムニスト紹介:こいしゆうか
ゆるいエ ッセイマンガなどを得意とする女子キャ ンプコーディネーター/イラストレーター
(オートキャンプ 2019年12月号 こいしゆうかの『女子キャンプ日記』より転載)
無断転載禁止 執筆者の許可を得て転載しているものです。
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