新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言も発表される事態となった4月、皆さま大変な思いで過ごされているかと思います。一刻も早い事態の安静化を日々願わずにはいられません。
少しでも気休めになればと思い、春の白川郷の様子と、普段の暮らしが戻って来た時に参考にしていただけるよう、これからの季節にドライブで気を付けたいことをご紹介します。
先シーズン記録的な雪が少ない年になってしまいましたが、季節は順当にめぐってきました。
道端にスミレやフキノトウ、カタクリの花が咲き始め、春の使者ギフチョウも飛び始めています。田んぼにはヤマアカガエルが卵を産み、森を歩けばウグイスを始め鳥たちのさえずりがにぎやかです。生物の数がぐんと増える時期になります。
これからの季節、特に注意したいのが夕暮れ時のドライブです。野生動物は薄命薄暮の時間帯によく活動するといわれています。山間の白川郷でも暗くなってから動物と遭遇することが多く、交通事故も起きています。
人間と野生の活動範囲が交差する場所が多くなった昨今、彼らの邪魔にならないように配慮し、出会うってしまった場合の心構えを知っておくことがお互いのためにもなります。例えばツキノワグマがいる所だったら音を出し続けてこちらの存在を先に知らせる、ニホンザルに遭遇したら攻撃と取られないように目を合わさない、餌を与えないなどの対処法があります。
しかし、これが夕暮れ時に車に乗っている場合に出会った時、少し困ったことがおきます。動物は暗闇でも行動できる目をもっていますが、車のヘッドライトのように強い光を直接目に受けると動けなくなることがあります。
私たちも夜の暗さを体感するために、わざと灯りを使わずに活動することがありますが、暗闇に目が慣れたところで、いきなり人工の明りを目に向けられると、思わず「まぶしい!」といって目を閉じてしまいます。野生動物たちが動けなくなるのも、こんな感じになるからではないでしょうか。
カモシカやツキノワグマといった大型の動物との交通事故は、彼らを傷めるだけではなく、車本体も破損します。実際、私の仲間もイノシシとぶつかった衝撃でバンパーが凹みました(イノシシは無事でそのまま逃げ去りました)。
お出かけのドライブを安全で楽しくするためにも、夕暮れ時には遠くを見通し早めの発見、そしてスピードを抑えた思いやりのある運転を心がけたいものですね。
<インタープリタープロフィール>
三原ゆかり(みはら ゆかり)
宮崎県出身。専門学校で自然環境について学び、卒業後は石川県白山自然保護センターで野生生物調査や、白山国立公園の登山道や自然案内などを担当。2004年にトヨタ白川郷自然學校のインタプリタ―に採用され、現在に至る。山のガイドや歩くプログラムも担当。
無断転載禁止 執筆者の許可を得て転載しているものです。
トヨタ白川郷自然學校『インタープリター通信』バックナンバー
「異常気象に負けないぞ! 」 トヨタ白川郷自然學校『インタープリター通信』2月号より
「雪上ランチのすゝめ」トヨタ白川郷自然學校『インタープリター通信』12月号より
「“言葉”の秋」トヨタ白川郷自然學校『インタープリター通信』10月号より
「夏はやっぱり川遊び!」トヨタ白川郷自然學校『インタープリター通信』8月号より
「森の中で“パワーナップ”」トヨタ白川郷自然學校『インタープリター通信』6月号より
「松の灯かりで照らす夜」~トヨタ白川郷自然學校『インタープリター通信』4月号より