「野山の恵みをいただきます」トヨタ白川郷自然學校『インタープリター通信』4月号

2021年4月5日

冬の間、あたり一面を覆いつくしていた雪もほとんど解け、地面の露出も多くなってきました。
4月に入り、白川郷でも少しずつ春の陽気を感じられる日が増えています。
たくさんの小鳥のさえずりに、植物の芽吹きなど生き物たちも動き出す季節に心がワクワクし
ています。

フキノトウの出芽

そんな春に楽しみなことが、山菜です。自然學校周辺にもフキノトウやタラの芽をはじめたくさんの食べられる山野草が生えています。
私はいつも、その日に食べる山菜を自分が食べる分だけ収穫し、採りすぎに気を付けながら野山の恵みをいただいています。
実際に森に入ってみると、時期によって少しずつ変わってきますが、食べられる山野草は意外と多いのです。

しかし、食べられるものにそっくりな有毒植物もあるので、山菜採りをするときには、
それが本当に食べられるものなのかしっかり確認することが必要です。
例えば、たまにニュースでも見かける有毒のスイセンですが、ニラにとてもよく似ています。
花が咲いていれば、まず間違うことはないのですが、山菜の時期は花を咲かせる前のため、
採った切り口から、ニラの大きな特徴である香りがするのか確認しましょう。
トリカブトは有毒種でも有名かと思いますが、葉っぱが山菜として食べるニリンソウによく似ています。
これ以外にも紛らわしいものはまだまだあります。

私たちは、体験プログラムでお客様と山菜を採って調理することもありますが、
その時は一緒に歩いて山菜を紹介しながら、その場で食べみることもします。
味以外にも色や形、香り、生えている環境などそれぞれの特徴をしっかり伝えるようにしています。
また、その場だけでは、確認しきれないものもあるので、調理する前に仕分け作業も行います。
特徴がはっきり出ていないものや、少し怪しいなと感じたものは調理しないようにしています。
このように徹底することで、安全においしく春を味わっていただけるのです。

収穫してきた山菜

とてもおいしい春の恵みですが、一歩間違えると死に至る事例も過去に数件発生しています。
キャンプなどで野山にお出かけした時には、近くで山菜を見かけるかもしれません。
本当に食べられるものなのかを知識のある人に必ず確認しましょう。
ぜひ季節限定の恵みを安全においしく味わってみてください。


<インタープリタープロフィール>

西岡 弘恭(にしおか こうすけ)
愛知県出身。高校卒業後は工場勤務の会社員だったが、趣味の登山がきっかけで、自然と
関わることができる仕事をするために専門学校へ。その後、豊かな自然に囲まれたトヨタ
白川郷自然學校へ入職。主にアクティビティの企画、運営を担当。

無断転載禁止 執筆者の許可を得て転載しているものです。


トヨタ白川郷自然學校『インタープリター通信』バックナンバー

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雪遊びを楽しむために」」トヨタ白川郷自然學校『インタープリター通信』12月号
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「急な天候の変化にご用心」トヨタ白川郷自然學校『インタープリター通信』8月号
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「雪上ランチのすゝめ」トヨタ白川郷自然學校『インタープリター通信』12月号より
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