山登りも、車の運転も、ちょっと買い出しに行くときも、当たり前に使われているGPS。
わたしたちの生活にいつのまにか溶け込んだGPSは、アウトドアのフィールドでも欠かせない存在となりつつある。
そもそも人の動きを察知するGPSは、衛星と星との距離を検知する技術を、人に発展できるかも?というアイデアから生まれたものらしい。
最初は軍事用に使用されていたが、1980年代に民間に解放されたことをきっかけに大きくわたしたちの生活に影響してきた。
わたしもよく使用している。
特に使うのはグーグルマップでキャンプ場を調べることと、旅のルートを予想し記録している。
旅のルートを予想して記録する
海外キャンプ旅や、友人らと行く数日間のキャンプ旅の前に、しばしばわたしは旅のルートを予想して記録している。
しかし一人旅のときはそれをしない。最初の数日だけゆるりと行く場所を決めて、あとは気分で決めたいからだ。
また、そんな終わりのないようなのんびりした旅とは違い、二泊三日ほどしかない時間が限られた旅では(特に誰かと行く場合)ある程度の予測が必要になってくる。
山に行くときは山地図を使うが、クルマや電車でキャンプ場を渡るような旅のときに、よく使うのがグーグルマップのマイプレイス。
旅の記録にも便利なのでよく使用している。
出発地から目的地を次々足していくと自分だけのルートができる
車だけじゃなく、徒歩でのルートも事前に記録できるので、観光でも、旅でも使える。
よくわたしは、山地図を眺めては「このルートで歩きたいなぁ…!」なんて恍惚な表情を浮かべているのだが、
それと一緒で、旅をしなくてもこれを使ってルートを作り夢を乗せてマップで遊んでも楽しいかもしれない。
ナチュラル・ナビゲーションという芸術
今やGPSがあれば、わたしたちが向かいたい先が明確になり、前述したように、紙の地図を開くことなくPCやスマホを開けば道がわかるようになった。
「便利になったなぁ」としみじみ関心していたが、一方でザワザワと心のどこかで何かを問う自分がいることも少し気づいていた。
そんなとき、とある一冊の本を見つけた。
「ナチュラル・ナビゲーション」
わたしたちの先祖のずっと昔には地図さえもなく、自然を利用して道を見つける手法があった。
メジャーな方法で言うと星がその例に挙げられる。星の位置をみて目的地を目指す指針にする。
海から道を読むこともある。自分たちがいる土地をよく知ることが前提条件だが、風と波で方向を読むことができるらしい。
また、鳥や水溜りでさえナビゲーションのヒントになる。
GPSが当たり前になった今、もはやその技術は必須ではない。
でもだからこそ、その技術は今や音楽や美術と同列に芸術なのだとこの本は言っている。
「ナチュラル・ナビゲーション」の一文にこんなことが書かれている。
「そう、旅の喜びが、いまいる世界を理解することにあるなら、その喜びをGPSに預けてしまうなど笑止千万ではないか」
しかし、GPSを使うのは悪ではない、登山での安全性がより確かになり、その道が開かれたおかげで、人と自然の距離が縮むこともあっただろう。
と少し心のなかで反論した先に、あえて今、ナチュラル・ナビゲーションを知ることの真髄が書いてあった。
「〜(略)新聞を買いに行くにも、船で大海に出るのでも、ナチュラル・ナビゲーションの知識があれば周囲の世界を見る目に、ほかでは望むことのできない新たな視点が加わるはずだ〜略〜多くの人にとって、ナチュラル・ナビゲーションは”地球という豊かな図書館の魅力あふれる蔵書を紐解くための鍵“なのである。」
ドキリとした。
GPSにおける心のざわつきは、便利であればあるほど何かを失っている気がするからだ。その何かが、ここでハッキリしたのは運がいいと思う。
そして、この本からあらゆる手段のナチュラル・ナビゲーションを知り、それを想像した。
自然の声に耳を澄まし、目を見張る。
そこからヒントを得て歩く旅はどんなにワクワクするんだろう!
夢が膨らむ。
ナチュラル・ナビゲーションを知って、地図なき道を歩くことがわたしの小さな目標になった。
いつかこのコラムで、ナチュラル・ナビゲーションについて語れるようにその芸術にもっと触れてみようと思う。
コラムニスト紹介:こいしゆうか
ゆるいエ ッセイマンガなどを得意とする女子キャ ンプコーディネーター/イラストレーター
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