女子キャンプのはじまりとおわり(その2)

2023年3月13日

女子キャンプという名前を掲げてから、わたしの人生も大きく変わった。

オフ会を開き、出会えることもなかった人たちにたくさん出会い、一緒にキャンプをした。

女性ならではの工夫や、自然と女性が集まるとパッと明るい華やかさもとても目新しく、本当に刺激的で楽しい日々だった。

あまりにもキャンプが楽しかったので、もっとこれを広めていきたいと思い立ち、おもいきって仕事を辞めてみた。会社の人には上手に説明ができず、夢を追いかけますのようなことを言ってやめたような気がする。

会社員を辞めて、キャンプのエッセイ漫画を描くことに目標を置きつつ、ますますキャンプの活動に熱心だった。

その頃キャンプを掲げてフリーランスで活動している人がほぼ皆無だったこともあって、雑誌のインタビューからはじまり、目新しいせいかテレビなどにも多く出演させてもらって、正直わたしが想像つかないところまで活動が大きく広がった。

そんなメディアの露出もあって、「ソロキャンプの講師をしてほしい」と文化センターさんから声がかかり、年齢幅も広い生徒さんたちの前でキャンプの魅力や自然に対峙するお話などをさせてもらえたり、大きな企業のウェブメディアのキャンプ監修など、「女子キャンプ」を超えた責任のある仕事も背負うことになった。

また目標だったエッセイマンガも発売し、それ以上に、まさかのテントも開発させてもらったりと、キャンプの仕事はますます忙しくなった。

「もっとキャンプの楽しさや、その価値をみんなに知ってもらいたい!」と不思議な使命感を持って突っ走っていった一方、

時々予想を遥かに超えた活動の多忙さに、心が折れてしまいそうなこともあった。

しかし、どうしても伝えたかった。自然のなかで孤独に自由になれたあの瞬間の感動を、分かち合える人や、それに救われる人が一人でもいるなら、自分の何かを折ってでも伝えるべきだとがんばれていた。

2020年、コロナが日本に広まり全てが一旦、静となった瞬間まで。

世の中は大きく変わり、人々の意識が自然へと向いたのか、

キャンプ業界は背中を押されるような形になった。

正直に言うと、わたしは多忙から解放された気持ちになり、とても心が楽になっていた。

毎日、30分以上散歩をし、カメラを持って写真を撮り、文章を書き、絵本を描いた。

肩身は狭かったが時々、遠くにキャンプに出かけてシンプルな旅を楽しんだ。

その旅のなかで、わたしにとっての「女子キャンプ」はもうすでに終わっていたことに気づく。

「やりきったな」という気持ちだった。

アニメやメディアの影響もあり、

コロナをきっかけに、「女性がキャンプをすること」は大きく広がり、

ましてや「ひとりキャンプ」も全国的に認知されるようになった。

人っ子ひとりいなかった冬のキャンプ場には、

今は信じられないほどのテントで埋まっている。

女性だけのキャンプはもはや当たり前になり、ソロキャンパーもよく見かけるようになった。

そして今、もはや「女子」をつける意味は全くもってなくなった。

女性が自立してキャンプをすることが、めずらしくない時代なのだ。

わたしにとっての、女子キャンプのはじまりとおわりのお話はこんな感じ。

自分だけが「女子キャンプ」を広めたとは思ってはいない。

いつのまにかじわじわと、時代とともに価値観が変化していくなかに

わたしがいなくても女性が自立をしたキャンプは広まっていただろうと思う。

でもその大きな波のなかの1つとして、わたしが何かを思って人生をかけて走り続けたこと、それに賛同してくれて、たくさんの人に応援してもらってたことがあったよということを記録に残しておきたく、この文章となりました。

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最後に、このコラムをはじめさせてもらったこと、

10年間休みなく続かせていただいたけたことは、わたしにとって大変大きなことでした。

とてもありがく感じています。

自分のなかを整理する言葉を1000文字にまとめる作業は、わたしのなかで欠かせない習慣のようなものでした。

どこの娘かもわからない、わたしにお声をかけてくださったオートキャンプ協会の堺さん、本当にありがとうございました。そして繋げていただいたガルヴィ元編集長の沖田さんにも大変感謝しています。

またコラムを連載中お会いした会長さんに「こいしさんのコラムが一番面白い」と言っていただいたことがとても励みになりました。ありがとうございました。

最後に、この「女子キャンプ日記」から読んでいただいた読者の皆様、10年間本当にありがとうございました。ときにはキャンプ場で「読んでるよ!」と声をかけていただいたこともありました。至らない点、拙い文章、などなど色々あったかなと思いますが暖かく見守っていただき、本当にありがとうございました。

今回連載終了にあたって、女子キャンプのおわりを書きましたが、

キャンプを含んだ女性のライフスタイルを、また新しい形で発信していきたいと思っています。

今後のこいしゆうかの活動も応援していただけると大変うれしいです。


コラムニスト紹介:こいしゆうか
ゆるいエ ッセイマンガなどを得意とする女子キャ ンプコーディネーター/イラストレーター

『女子キャンプ日記』これまでのコラム

女子キャンプのはじまりとおわり(その1)〜こいしゆうかとキャンプごと2月〜
飽和状態の危機〜こいしゆうかとキャンプごと1月〜
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